Sea to summit 富士山への挑戦!その2!
また来た道をてくてくと。見ると津波避難タワーが立っているが、スーパー堤防より、さらに一段下がったところに立っているので、せっかくの12mくらいの高さがまるで台無し。作るところがなかったんだろうけど、もっと高台に作ればいいのに。と素人目に思う。とはいえ、いろんな計算も働いているんだろうと思う。
吉原の駅まで戻り、再度地図を広げる。足元には、富士山チャレンジのルートガイドの表示が張ってあり、危うくそっちへ行きそうになる。俺たちが向かうのは、富士村上古道だ。とはいえ、地図だと駅を大きく迂回するので、ここは体力温存して駅の渡り通路を歩く。日影が気持ちいい。すでに、太陽は高く、汗は止まらない。
吉原北口をまっすぐ幹線道路に出ようとして、早速用水路。これが最初のUターン笑。急がば回れだ。
「そーいや、朝めし食った?」。朝から青汁しか飲んでいないことに気が付き、じゃあコンビニ行きましょう!こういう時に秀平の日本一周の経験が役に立つ。グーグルマップでささっと検索。残念ながらイートインはなかったが、ローソンを見つけて朝飯タイム。店頭の日陰で飯を食う。
「お前、この旅が終わったらどうすんの?」。「大工の棟梁に弟子入りします。もうオヤジが頼んでくれているそうで」。彼の実家は茨城の工務店。彼が跡目を取れば、3代目?正確には4代目か?親父さんの修さんとしては、早く仕事を覚えて欲しいんだろうなぁ。自分の親父のこともちょっと思う。うちの親父にも、もうちょっとマシなところを見せれたら、安心して逝けたろうにな。とか思う。
朝めし食って、さぁ歩くど!東海道をてくてくと歩く。
途中、観光名所があってもほとんど目もくれない。東海道五十三次で有名な左富士のポイントもスルー。
でも、水場は必ず寄っていく。皇太子殿下の記念碑にも水場があった。助かる。今回は、私も頭から水をかぶる。ひゃー気持ちいい!!「皇太子殿下って、今の天皇ですかね?」「建立が大正って書いてあるから、昭和天皇じゃね?」歴史だ。
汗がじっとりといや、正確にはだらだらと、肌に張り付いていたので、真水は本当に気持ちがいい。
先を急ぐと、吉原の商店街。鯛屋さんは、なかなか見えないが全国を歩いた秀平が、「日本中こんな感じでどこの商店街もヤバいっすねー」。確かに、あまり活気があるようには見えない。
本来の東海道は、一本中に入るようだが、あまりの暑さにまっすぐ進む。どうせ、この先合流する。細かいことは気にしない。
商店街を過ぎると、道も広がってくる。ヤバい。このまま歩き続けると熱中症どころか日射病にかかる。水分はまめに補給しているが、日差しがヤバい。両腕もふくらはぎも日焼けして真っ赤だ。
通り過ぎるタクシーが恨めしい。「た、タクシーを呼ばないか?」。私の呼びかけにも、秀平は意にも介さずすたすたと歩き続ける。
ここで、大きな失敗に気が付く。石井さんを連れてきたことだ。石井さんの本格的な登山靴は、山ではもはや最強。冬の八ヶ岳も、様々な岩稜帯も歩きぬけてきた。が、アスファルトにはめっぽう弱い。
平らなアスファルトだと、常に同じところが接地するので、足にまめも出来てきた。汗をかいていて足がむくんでいるのも原因の一つだろう。
経験上、足の豆は膨らむ前に違和感を感じた時点でテーピングを張っておくと進行を食い止めることができる。ちょうど道路工事中の箇所に出くわして、ダンプが出るからちょっと待ってろと言われた。ちょうどいい。隣には、自動販売機もある。迷わず、コーラ。うまい!!建売住宅の駐車場の日陰を借りて、靴を脱ぎ、せっせと違和感のある個所にテーピングを張っていく。道路工事は、水道本管を入れた後の本復旧工事の様だ。この暑さで、アスファルト路盤をはがしていく。うちの土木チームもこんな作業してるんだよなー。暑いだろうなぁ。オレは歩いているだけで暑いのに、機械に囲まれて大変だろう。暑い中作業している作業員の皆さんには、頭が上がらない。小池設備のスタッフへの感謝の念が沸き起こる。私たちを止めたガードマンさんは、ちょうど田子の浦あたりに住んでいるという。「ばーさんと二人だから津波が来たら逃げ切れないな。そのまま二人で茶でもすすりながら人生を終えるよ」。印象深いセリフだった。さて、準備が出来たら、折れそうな心を支えて出発だ。足の裏は、歩き出しが一番きつい。
そういえば、この長い長い上り坂は、いつまで続くのだろうか?思えば、田子の浦から一度も下らずに登り続けている気がする。そりゃそうか、山頂までこの長い長い上り坂は続くのか。
そんな私を見て、秀平はしきりと休憩を勧める。コンビニを見つけると必ず寄った。す、涼しい。楽園だ。
「ここで、太陽が収まるまで大休憩しましょう!」お店の中はまるで天国だった。冷房が掛かっていて、カラダから汗が引いていくのが分かる。
「ここでビール飲んだらヤバいっすよね?!」そうだなーヤバいよなー。まだ目的地までかなりあるしなー。「じゃ、ハイボールで笑」。お店で冷蔵品用の氷ももらえる。ビニール袋にハイボールに氷を入れてしばらく冷やす。
場所は、店舗入り口のわきの階段。即席の宴会場だ。(お店の方にはご迷惑をお掛けしました)
二人で乾杯し、思わず二本目はやっぱりビール笑。ダメだ、無茶苦茶旨い!しばらく食事をとって、秀平がこの先のセブンイレブンとローソンにはイートインがあることを発見。彼の特技は、グーグルマップでお店の外観からイートインがあるかどうかを判別できるという。
カラダの火照りも取れたので、少しだけ歩くことに。また、あっという間に汗が噴き出してきたが、コンビニのイートインはPARADISEだ。涼しー、きもちいい!!
秀平は完全にイートインで眠りこけている。朝も早かったし、疲れているんだろう。この隙に地図を頭に入れなくては、現在地と本来のルートを照らし合わせ、ここまでの行程と速度などを鑑みてみると、んーこりゃ明るいうちに今日の目的地の浅間神社には到着しそうもないなぁ。
仕方がない、まだ日差しはあるが外に出てみるとだいぶん緩くなってきているので、秀平を起こす。「まだちょっと暑いけど、行こう」
彼は、しぶしぶ起き上がって身支度を始める。
今日の目的地の富士根本宮村山浅間神社までは、あと3時間くらいかかりそうだ。元の正規ルートへ戻り、歩みを進める。だいぶ、人里から離れてきた。
茶畑の新芽がきれいだ。ただ、ところどころ荒廃地も目立ってきた。すると、農家のおばちゃんが、ご自宅で声をかけてくれた「どっから来たん?富士山行くん?今日はどこに泊まるん?お茶飲んでく?」
おおー!神は居た。足の裏の豆も新たに痛みが出ていたし、ここで休憩はありがたい。ペットボトルのお茶を出してくれて、お接待をしてくれた。「海から上がってくるなんてすごいねぇ。私なんて7合目とか8合目で精いっぱい。こんなに近くに住んでても、行ってみようとは思わない」「毎日富士山が見れると幸せ」「若い頃は日が暮れるまで働いたけど、最近はもう5時のチャイムで終わり自分がお金に不自由なくそれなりに暮らせればそれでいい」「朝日よりも、夕日が好き。朝日は登ってきたら勝手に登ってくるけど、夕日は暮れてしまったら明日まで太陽に会えないら、今晩死んじゃえば明日の朝日を見れる保証なんて無いしね」って、気さくにいろんな話をしてくれました。
おばちゃんに勇気づけしてもらって、先を急ぎます。ちょっとした集落で、犬を連れたおじさんに会いました。秋田犬?凛としてでも人懐っこい犬です。名前を聞くと「ムサシ」。おお、かっこいい!
おじさんに「今夜はどこで泊まるんか?ジャンボリーか?」と尋ねられましたが、今夜は浅間神社に野宿しようと思ってと正直に話ました。すると、「基本的に境内で野宿はダメだそうです。でも、最近神社の役員になった山本さんって家があるから相談してみな」っておしえてくれました。「勝手にやるなよ?下の部落のモンに言われたって言えば悪いようにはしないと思う」と。
おじさんは、その先の村の神社の前まで行くとさっと姿勢を正し、お参りしています。その背中になんかとてもジワリと来るものがあり、二人でその姿に見とれてしまっていました。
そこからもう20分。最後の力を振り絞って富士根本宮村山浅間神社が見えてきた時の感動と云ったら。早速境内に上がり、手水で清め参拝。この旅が、自分自身にとって大きな学びとなり、この経験で何かしらの社会のお役に立てるようにとお参りしました。あ、それと、今夜ちゃんと寝れますように。
荷物をデポして、山本さん宅を探します。「こんにちわー」。ここじゃない。ここは作務所だ。境内のわきを出るとそこには山本商店の看板(を外してあったのかも)が!おお、ここが有名な山本商店。歴戦のこのルートの挑戦者たちのブログにもたびたび出て来ていた!
お店は閉まっていたので、自宅の方へ回り込み、「ごめんくださーい!」と何度か声をかけると、奥からおばあさんの声が。「はーい、何の御用?私いま裸なの」。そ、それは失礼しました。
少し待つと、おばあちゃんが出てきてくれました。かくかくしかじか境内でテントを張りたいというと、「最近は若いうちのモンに任せてしまっているから、若い人に聞いてみないとだね。おーい!おーい!」と若夫婦を呼んでくれました。
再度、テントを張りたい件、下の部落で相談しろと言われた件を話してみると、「許可を出すわけにはいかんけど、たまにそこの公衆便所の辺りでテントを張っている人を見かけるね。市役所のもんだし、良いんじゃないか?」とのこと。あ、ありがたい!
浅間神社に到着した時にはまだ明るかったけれど、テントを張り終える頃には辺りは真っ暗です。ここの公衆便所は、外灯もあって助かりました。唯一の難点は、公衆トイレの鍵が締まっていること。これが空いていたら本当に最高でした。
二人で、飯食って9時30分には寝よう!明日は4時起きだ。撤収して5時には出るぞ!と決めてから、晩御飯は秀平が全部やってくれました。なぜなら、私がもう一歩も動けなかったからです。やっぱ強いなぁ。秀平は、ご飯を炊いて、カレーのレトルトを温め、洗濯と、行水をしてくると言います。シャツもパンツも二枚しかないため、これを怠ると大変なことになるとか。確かに、今日もたくさん汗をかいたね。
アミノサプリを飲み、しばらく横になっていると少し元気が出てきました。なんか若者にすべてを任せているのが申し訳なく、炊事場まで見に行ってみると暗闇の中で裸で洗濯をしている男がいます。これ、知らない人が見たら腰抜かすだろうな笑
すでに、行水を終え、ご飯も蒸らしているところとのこと。有難い。何から何まですみません。その分酒とつまみはしっかり担いできたので、それで勘弁してくれ。
外は私の苦手な蚊が多かったので、テントの中で宴会場を整え、男二人のテント飯。夜露を避けて、便所の目の前笑。酒は、石井さんの好きだった「いいちこ25度」のハーフパック。氷なんてないので水で割るだけですが、うまかったなぁ。